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川端康成『古都』

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七緒vol45にて辛酸なめ子さんが紹介していた川端康成『古都』。『伊豆の踊り子』『雪国』で有名な川端康成ですが、読むのは初めてでした。

京都の着物問屋の美しい一人娘、千重子。捨て子ではあるけれど、両親の愛情を受けて育ち、聡く優しい女性に成長します。その千重子を中心に、生き別れの妹・苗子との出逢い、商人の仕事よりも帯のデザインに身を入れる義父、幼馴染の真一と兄・竜助、西陣織屋の息子・秀夫、それぞれの人物の想いが交錯していきます。

また、京都を舞台に、花見、葵祭祇園会、大文字といった四季折々の風物が描かれていきます。作者のあとがきにもあるように、京言葉は京都のひとに頼んで直してもらったそうです。その時代の自然な京言葉が使われています。

あとがきによると、この小説が書かれる前から作者は眠り薬を濫用していたそうで、書きながらも眠り薬に酔いうつつないありさまで書いたそうです。この作品を「私の異常な所産」と呼んでいます。後で辻褄の合わないところは校正したけれど、かえってこの作品の特色となっている乱れや狂いはそのままにしておいたそうです。

例えば、義父のエピソードが突然現れ、脈略のないまま終わる場面があります。そういった急な話の飛び方は、まるで人の夢を覗いているようです。

京を舞台に幻想的に紡がれた物語。すらすら読めて着物の勉強にもなる、何重にも楽しめる作品でした。